葉牡丹と青虫

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長らく一緒に過ごした、うさぎのらび太に、花を供えられる季節がやってきた。今は、ピンクのカーネーションと紫色の菊を写真の後ろに置いている。この花のコンビは丈夫で、長持ちするありがたい組み合わせだ。

 

菊を見ると、以前住んでいたアパートの大家さんを思い出す。大きめの一戸建ての二階を改装したアパートで、大家さんは一階に住んでいた。彼女はいわゆるグリーンフィンガーで、季節ごとに植木を育てていた。春から初夏は朝顔、晩夏から秋は菊というように。毎年、品評会に出品して賞を貰っていたようだ。

 

ある年の暮れに、大家さんから葉牡丹の寄植えをいただいた。葉牡丹という文字からは想像がつかない、美しくレイアウトされた寄植えだった。私は嬉しくて狭いベランダに飾り、世話を始めた。気候が穏やかになって来た頃、葉が虫食い状態になっていることに気づいた。よく見ると、5〜6匹の青虫がついていた。びっくりして、ティッシュで掴んだ。虫の一生は短い。無事に蝶に成長するように願いながら、雑草の繁った1階の庭に落とした。

 

数日してから、その葉牡丹の鉢植えを見てみると、葉がほぼなくなっていた。青虫は、もういないはずなのに。まじまじと見ると、一匹残っていて、その青虫が葉を食い尽くしてしまったらしい。もう食べる葉はない。気の毒に思い、翌日、近くのお花屋さんで葉牡丹の鉢植えを買って来た。青虫の食料兼住みか用に。ベランダに出し、青虫を引越しさせようと見ると、姿が見当たらなかった。鳥に啄ばまれてしまったのだろう。葉のない葉牡丹についていた青虫は、よく目立ったに違いない。私はがっかりした。

 

小さな青虫にさえ、思いがけない事が起こる。ある日、仲間が居なくなり、食料の葉牡丹を独り占め。食べ尽くしてしまい、ついには鳥の餌食に。先々、何が起こるかわからない、ということについてはあらゆる生物は平等だ。鳥に啄ばまれるように、思いがけず一生を終えることもある。
人間の私は、今日も無事に一日を過ごせてよかった、と夜布団に入る。朝、つつがなく眼が覚める。また一日が始まってしまうかと起き上がりながら、そんな日々をありがたくも感じる。
青虫の食料兼住みかになる筈だった葉牡丹には、思いがけない幸運になったかな。